賞与の社会保険料は?決定方法や各種保険料の計算について解説

ご覧いただきありがとうございます。社労士オフィスそらです。

6月に入り、賞与の支給が近づいている方も多いのではないでしょうか。

本日は、賞与の社会保険料についてご案内いたします。

この記事でわかること

1 賞与の定義は?報酬との違い
2 社会保険料は標準賞与額と保険料率によって決まる。計算例を紹介
3 賞与支払い後の手続き
4 賞与から社会保険料を控除しないケースは?
5 賞与を4回支給するメリット・デメリット
6 まとめ

賞与の定義は?報酬との違い

賞与とは、従業員が労働の対償として、年3回以下の範囲で支給を受ける「報酬」以外のものを指します。

支給されるものについて、賞与や期末手当などの名称は問いません。

ここでいう「報酬」とは、労働の対償として毎月または定期的に支給されるものであり、基本給に各種手当を加えたものです。

(見舞金や祝い金など、臨時に支払われるものは除きます。)

また、年間を通じて4回以上支給されるものは、「賞与に係る報酬」(※)として、報酬と同じ扱いをします。

なお、賞与に係る報酬は、各種規程や賃金台帳から、同じ性質を持っていると判断できるもので区分します。

※賞与に係る報酬について
毎年7月2日以降に、賞与規程が新設され、支給実績のない場合には、年4回以上の支給について定められていても、次の定時決定(7月~9月の随時改定を含みます。)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、「賞与」として取扱います。
なお、次の定時決定で「賞与に係る報酬」に該当した場合には、7月1日以前1年間の総支給額を12で割って、月々の給与総額に加算します。

参照:従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)、【事業主の皆様へ】報酬・賞与の区分が明確化されます(日本年金機構)

社会保険料は標準賞与額と保険料率によって決まる。計算例をご紹介

賞与の社会保険料は、毎月(定期)の給与と異なり、支払いの都度、計算します。(※)

社会保険料とは、雇用保険料・健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料のことです。

計算式は下記のとおりです。

雇用保険料=賞与額×保険料率(被保険者負担分)

健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率÷2分の1(事業主と折半)

※健保組合の場合、事業主との負担割合が異なる場合があります。

「標準賞与額」は、税引き前の総支給額から1,000円未満を切り捨てて計算します。

なお、標準賞与額には上限額があります。

健康保険は年度(4月1日~翌年3月31日)の累計額が573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限です。

※給与の社会保険料は?
給与などの報酬は、「標準報酬月額」と「保険料額表」を使用して、雇用保険料以外の社会保険料を決定します。
(標準報酬月額の等級に応じた社会保険料を支払います。また、雇用保険料は、支払いの都度計算します。)
基本的に、4月から6月に支払われた給与の平均額から報酬月額を計算して、一定期間の標準報酬月額を決定します。(定時決定)
なお、固定的賃金の変動があったとき(随時改定)や育児休業終了時などに改定があります。

詳しい決定方法は、別記事にて解説:社会保険料の決定方法の記事はこちら

計算例

税引き前の賞与の総支給額が415,500円の場合で、令和6年6月支給の従業員負担分の社会保険料を計算します。

(※福岡県の事業所、協会けんぽ保険、40歳の方とします。)

雇用保険料

雇用保険料は、税引前の総額に、事業の種類によって3つに区分されている雇用保険料率をかけて計算します。

415,500円×0.6%(一般の事業・労働者負担分)=2,493円

参照:令和6年度の雇用保険料率について(厚生労働省)

健保・介護・厚生年金保険料を計算のため、標準賞与額を求めます。

1,000円未満を切り捨てるため、標準賞与額は415,000円です。

健康保険料

福岡県の令和6年3月納付分からの健康保険料率は10.35%、介護保険料率は全国一律で1.79%です。

415,000円×10.35%÷1/2=21,476円 (50銭以下切り捨て)

介護保険料(40歳以上で徴収) 

415,000円×1.6%÷1/2=3,320円(同上)

厚生年金保険料

厚生年金保険の保険料率は、現在は18.3%で固定されています。

415,000円×18.3%÷2分の1=37,972円(同上)

参照:令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(全国健康保険協会 福岡支部)

賞与支払い後の手続き

賞与を支給した場合は、支給日から5日以内に、「賞与支払届」を年金機構(事務センター)に提出します。

また、年金機構に賞与の支払月を登録している場合(※新規適用届に記載欄があります。)であって、賞与が不支給であるときには、「賞与不支給報告書」を提出します。

賞与から社会保険料を控除しないケースは?

育児休業等期間中の保険料免除要件に該当した場合

賞与を支払った月の末日を含んだ、連続した1か月を超える育児休業等を取得した場合に、保険料が免除されます。(※)

1か月を超えるかどうかは、暦日で判断します。

※育児休業中の保険料免除について
3歳に満たない子を養育するための育児休業等期間は、事業主が「育児休業等取得者申出書」を提出することで、社会保険料の支払いが事業主・労働者ともに免除となります。


令和4年9月までは、育児休業等期間に、月末が含まれる月に支給された賞与の保険料は免除の対象でした。

育児休業等期間が残り数日でも、月をまたげば、賞与の保険料が免除されていましたので、令和4年10月以降に取得する育児休業等については、賞与に関する免除要件が厳格になったといえます。

参照:令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました(日本年金機構)

賞与の支給後、月途中で退職した場合

社会保険料は、被保険者資格を取得した月から、資格喪失日が属する月の前月分までを支払います。

資格喪失日とは、被保険者でなくなる日のことです。

退職で被保険者資格を喪失する場合、資格喪失日は退職日の翌日です。

そのため、月末以外の退職では、退職月の社会保険料は控除されません。

なお、月末に退職すると、翌月1日が資格喪失日のため、前月支給の賞与から社会保険料が控除されます。

また、雇用保険料は給与支払いの都度控除しますので、退職日にかかわらず、最後の給与から徴収されます。

賞与を4回支給するメリット・デメリット

4回以上支給される賞与は、賞与に係る報酬として、報酬と同じ扱いをします。

メリット・デメリットをまとめました。

メリット

1、社会保険料の負担軽減

標準報酬月額の金額の上限が、標準賞与額の上限よりも低いためです。

令和6年現在、健康保険の標準報酬月額の上限は139万円(報酬月額135.5万円以上)、厚生年金の上限は65万円(報酬月額63.5万円以上)です。

標準賞与額の場合、支給額が大きいほど、保険料負担も大きくなります。

標準賞与額の上限は、健康保険は年度の累計額が573万円、厚生年金保険は1か月あたり150万円のため、標準報酬月額よりも高額です。

年4回以上の賞与として報酬と同じ扱いをすることで、年収が高額な方は、保険料負担が軽減できる可能性があります。

2、傷病手当金・出産手当金の金額アップ

上記の手当金は、標準報酬月額をもとに金額を計算するためです。

年4回以上の賞与を、標準報酬月額の計算の基礎とすることで、手当金の金額がアップします。

デメリット

1、将来の年金額に反映されない

年金額の計算には、標準報酬月額と標準賞与額を用いるためです。

賞与として支給されないことで、収入に見合った年金を受給できない可能性があります。

2、社会保険料の負担増大

報酬月額の上限額以下の給与である場合は、毎月の社会保険料負担が大きくなります。

まとめ

賞与の社会保険料のポイント

賞与とは、従業員が労働の対償として、年3回以下の範囲で支給を受ける「報酬」以外のもののこと

年間を通じて4回以上支給されるものは、「賞与に係る報酬」として、報酬と同じ扱いをする。但し、賞与規程が新設されて支給実績がない場合、次の定時決定(7月~9月の随時改定含む。)による標準報酬月額が適用されるまでは、「賞与」として取扱う。

賞与の社会保険料の計算式は、雇用保険料=賞与額×保険料率(被保険者負担分)健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率÷2分の1(事業主と折半)

・賞与を支給した場合は、支給日から5日以内に、「賞与支払届」を提出する。

・賞与から社会保険料を控除しない場合がある。(育児休業期間中の保険料免除要件等に該当、月途中の退職など)

本日のご案内は以上です。

ご不明点のある事業主の方、労務ご担当者の方はお気軽にお問い合わせください。