出産に伴う給付金は?金額や申請のポイントについて解説

ご覧いただきありがとうございます。社労士オフィスそらです。

本日は、出産手当金・出産育児一時金についてご案内いたします。

この記事でわかること

1、出産に伴う給付金は?
2、出産手当金の支給期間・金額
3、申請のポイント
4、出産育児一時金の受給要件・金額
5、資格喪失後に出産手当金・出産育児一時金を受給できる?
6、まとめ

出産に伴う給付金は?

出産に伴い、健康保険から支給される給付金は、出産手当金・出産育児一時金です。

出産手当金は、被保険者や家族の生活を保障し、安心して産前産後休業ができるようにするための制度出産育児一時金は、出産費用の経済的な負担軽減のために設けられている制度です。

各給付金の概要は以下の表のとおりです。

出産手当金出産育児一時金
支給要件出産のため会社を休み、給与の支払いを受けていないこと被保険者及びその被扶養者が出産したこと
支給期間出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目一時金として支給
金額支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×2/350万円(令和5年4月1日以降)※産科医療補償制度の対象外の出産等の場合は48.8万円
対象者被保険者本人のみ。被扶養者は対象外被保険者及びその被扶養者
(出産手当金と出産育児一時金の概要)


なお、国民健康保険に出産手当金の制度はありません。出産育児一時金のみ支給されます。

出産手当金の支給期間・金額

支給期間

出産手当金は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から、出産の翌日以後56日目で、会社を休み、給与が支給されない期間に対して支給されます。

出産手当金の支給期間は、労働基準法の産前産後休業期間(※)と同様の期間です。

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

引用:労働基準法 第65条


出産予定日より遅れて出産した場合には、遅れた期間も出産手当金の支給対象です。

なお、出産の日は産前休業に含みます。

出産手当金の金額

1日あたりの手当金の計算式は、「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2」です。

支給開始日とは、一番最初に出産手当金が支給された日のことをいいます。

なお、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合には、

①継続した被保険者期間の標準報酬月額の平均額

②全被保険者の標準報酬月額の平均額(※健保協会の場合は30万円です。)

この2つを比較して、低い方の金額をもとに支給額を計算します。

なお、会社を休んでいる日に対して給与の支払いがある場合、その額が出産手当金よりも少ないときは、その差額が支給されます。

また、出産手当金の計算式は、傷病手当金の計算式と同様です。

傷病手当金と併給される場合には、出産手当金が優先して支給されます。

参照:傷病手当金についての記事はこちら

申請のポイント

未来の日付で申請せず、申請期間を含んだ給与の締め日を過ぎて申請することです。

まだ経過していない期間を記載すると、申請書が差し戻されてしまいます。

出産手当金の支給申請書には、医師(助産師)と事業主の証明欄があります。

医師からは、予定日と出産日の証明を受ける必要がありますが、出産日の証明は確定してからでないとできません。

そして、事業主は被保険者への賃金支払状況に間違いがないことを証明する必要があります。

賃金の支払い状況は、給与の締め日が到来してからでないとわからないため、このような取り扱いとなっています。

なお、出産手当金は、まとめて申請される方が多いですが、産前分・産後分など、複数回に分けて請求することも可能です。

この場合も、事業主の証明欄は毎回記入が必要です。

(※医師の証明欄は、1度目の申請が出産後で出産日が確認できたときは、2回目以降の申請書への証明は省略できます。)

参考:出産手当金 支給申請書 記入の手引き(全国健康保険協会)

出産育児一時金の受給要件・金額

健康保険の被保険者や家族(被扶養者)、国民健康保険の被保険者(※)が出産したときは、出産育児一時金が支給されます。

※国民健康保険には、「被扶養者」という考え方がありません。
会社の健康保険の被保険者・被扶養者、後期高齢者医療制度に加入している方、生活保護を受けている方以外は被保険者です。


支給対象は、妊娠4ヵ月(85日)以上の方の出産です。

出産は、生産(早産)・死産(流産)・人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含みます。)のことをいいます。

出産育児一時金の金額は50万円です。令和5年4月1日以降の出産より、42万円から引き上げになりました。

なお、下記の条件に該当する場合、金額は48.8万円となります。

・産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合
・産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合

※産科医療補償制度とは
医療機関等が加入する制度で、加入医療機関で制度対象となる出産をして、万一、分娩時の何らかの理由により重度の脳性まひとなった場合、子どもとご家族の経済的負担を補償するものです。


出産育児一時金は、費用負担軽減のため、協会けんぽ(健保組合)から出産育児一時金を医療機関等に直接支払う、「直接支払制度」を利用して支給されることが一般的です。

直接支払制度を利用しない場合は、被保険者が医療機関等へ出産費用を支払い、後日、出産育児一時金を申請します。

参照:出産育児一時金 支給申請書 記入の手引き(全国健康保険協会)

資格喪失後に出産手当金・出産育児一時金を受給できる?

出産手当金

退職後に出産手当金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。

・退職日(資格喪失日の前日)までに、継続して1年以上の被保険者期間があること

・資格喪失時に出産手当金を受けている、または受ける条件を満たしていること


なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないため、退職日以降の出産手当金は支払われません。

出産育児一時金

退職後に出産育児一時金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。

・退職日までに、継続して1年以上の被保険者期間があること

・退職日の翌日から、6ヵ月以内の出産であること

資格喪失後の給付は、被保険者本人の出産のみ対象です。被扶養者の出産は対象外となります。

まとめ

出産手当金・出産育児一時金のまとめ

【出産手当金】
・被保険者や家族の生活を保障し、安心して産前産後休業ができるようにするための制度
・会社を休んで給与の支給がないことが要件。産前産後休業期間中に支給される。
・1日あたりの手当金の計算式は「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2」

【出産育児一時金】
・出産費用の経済的な負担軽減のために設けられている制度
・金額は令和5年4月以降の出産から50万円(一定の場合は48.8万円)
・一般的に、直接支払制度が利用される。

本日のご案内は以上です。

ご不明点のある事業主の方・労務担当者の方はお気軽にお尋ねください。

参照:出産手当金について子どもが生まれたとき(全国健康保険協会)