退職後の健康保険はどうなる?切り替え手続きについてわかりやすく解説
ご覧いただきありがとうございます。社労士オフィスそらです。
本日は、退職後の健康保険についてご案内いたします。
この記事でわかること
1 退職後の健康保険の切り替え手続きは?
2 選択肢は3つ!各制度の特徴・手続きについて
3 保険料はいつから支払う?
退職後の健康保険の切り替え手続きは?
会社員の方は、在職中は会社経由で健康保険に加入しています。
退職後、75歳未満の方(※)は、ご自身の状況に応じて、健康保険の切り替え手続きが必要です。
※日本は、全ての方が何らかの医療保険に加入する、「国民皆保険制度」をとっています。ここでいう医療保険とは、会社員の方などが加入する「被用者保険」(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合)、自営業者の方などが加入する「国民健康保険」、75歳以上(一定の障害がある方は65歳以上)の方が加入する「後期高齢者制度」のことを指します。
参照:国民皆保険制度(全国健康保険協会)
選択肢として、①国民健康保険への加入②任意継続制度の利用③ご家族の健康保険に加入することが挙げられます。
それぞれの制度の特徴や手続きについて確認します。
選択肢は3つ!各制度の特徴・手続きについて
①国民健康保険への加入
健康保険の被保険者資格を喪失(退職日の翌日)してから、14日以内にお住まいの市町村の窓口で手続きを行います。
保険料は、前年(1月~12月)の所得が判定基準の一つになるため、退職した年には保険料が高額になる可能性があります。
なお、国民健康保険には「扶養」という考え方がありません。保険料は世帯単位で計算されます。
ご家族に被扶養者(扶養されている方)がいる場合、次に説明する任意継続制度の方が保険料が低くなることがあります。
また、倒産など、ご自身の事情でない理由で退職した場合には、届出により、保険料の減免措置を受けることが可能です。(特定受給資格者または特定理由離職者)
減免措置では、前年の給与所得が30%に換算された上で保険料が計算されます。
国民健康保険料は、市町村によって異なります。各市町村ごとに財政状況や加入者数、医療費が異なるためです。
お住まいの都道府県や市町村のホームページを確認しましょう。
参照:国民健康保険制度(国保)(福岡市)
②任意継続制度の利用
退職後2年間、会社で加入していた健康保険に個人で加入できる制度です。
加入条件は下記のとおりです。
- 資格喪失日の前日までに継続した被保険者期間が2か月以上ある。
- 資格喪失から20日以内に申請する。
在職中に被保険者として受けられた保険給付を、ほぼ変わらない条件で受けることができます。
なお、傷病手当金や出産手当金は、資格喪失後の継続給付(※)の要件に該当しない限り、受給することができません。
※資格喪失後の継続給付とは
資格喪失時に既に受給していた(受給できる要件を満たしていた)、傷病手当金や出産手当金を引き続き受給できる制度のこと。被保険者のみが対象。資格喪失日の前日(退職日)までに、1年以上被保険者であること等が要件。
資格喪失後、6か月以内に出産をしたときは、出産育児一時金を受け取ることも可能。
また、健保組合などは、通常の給付に加え、付加給付制度や検診の補助金制度が利用できる場合があります。
任意継続の場合、一部は給付適用外となることがありますが、この制度を利用できることはメリットの一つです。
保険料は、退職時の標準報酬月額に基づいて決定されます。
原則として2年間、保険料の変更はありませんが、事業主と半分ずつ負担していた保険料が全額自己負担になります。
健保協会の標準報酬月額の上限は30万円です。
そのため、標準報酬月額が30万円を超えている場合は、30万円の標準報酬月額で計算した保険料を支払います。
なお、組合は各組合ごとに標準報酬月額の上限が異なります。
参照:退職後の健康保険のご案内(任意継続) (全国健康保険協会)
③ご家族の健康保険に加入する
年間の収入見込みが130万未満(60歳以上または一定の障害状態に該当する場合は180万円未満)で、ご家族の年間収入の2分の1未満の場合、被扶養者として、ご家族の健康保険に加入することができます。
ご家族の事業主経由で、被扶養者(異動)届の提出が必要です。
被扶養者となるためには、国内居住要件や、被扶養者の範囲内であること(3親等内の親族)、収入要件(別居の場合、仕送り額の基準あり)など、一定の要件を満たす必要があります。
なお、収入は、これまでの収入ではなく、今後1年間の収入見込みで判断します。
非課税の給付を含め、継続して得られるものはすべて収入です。
失業給付を受給している場合は、原則として被扶養者になることはできません。(基本手当日額の金額により、被扶養者に該当することもあります。)
保険料はいつから支払う?
健康保険は月単位で加入するため、日割りという概念がありません。
月の途中で加入しても、資格取得日の属する月から保険料を負担します。
まとめ
退職後の健康保険のポイント
・退職後は75歳になるまで、ご自身で健康保険に加入する必要がある。選択肢として、①国民健康保険②任意継続制度の利用③被扶養者になることが挙げられる。75歳以上になると、後期高齢者医療制度に加入し、保険給付を受ける。
・国民健康保険は、減免制度を利用できる場合がある。扶養という考え方がなく、世帯単位で保険料が計算される。
・任意継続は、資格喪失から20日以内に申請する。保険料は、今までの2倍を負担すると考える。(上限あり)
・条件に合致すればご家族の被扶養者として、健康保険に加入できる。ご家族の事業主経由で手続きを行う。
・保険料は日割りという概念がない。資格取得日の属する月から保険料を負担する。
本日のご説明は以上です。
ご不明点のある事業主の方、労務ご担当者の方はお気軽にご相談ください。