労働保険の年度更新とは?対象となる賃金や申告書の書き方について解説

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本日は、労働保険の年度更新の手続きについてご案内いたします。

この記事でわかること

1、労働保険の年度更新とは
2、保険料計算の対象となる賃金は?
3、賃金集計表と申告書の書き方
4、保険料納付のあれこれ
5、電子申請について
6、まとめ

労働保険の年度更新とは

労働保険の年度更新とは、前年度の確定した労働保険料の申告・納付手続きと、今年度の未確定の保険料を、おおよそで見積もって申告・納付する手続きを併せたものです。

保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位として計算します。

計算式は、「労働者に支払った(支払うことが確定した)賃金総額×事業の種類によって定められた保険料率」です。

申告は、毎年6月1日から7月10日までの間(※持参の場合は、申告期間が休日で前後します。)の間に行うため、申告時点で今年度の正確な賃金総額はわかりません。

そのため、今年度の保険料は、賃金総額を予測した上で保険料率を乗じて、おおよその金額を支払うことになります。

これを「概算保険料」といいます。

一方、前年度の賃金総額は、今年度の申告時点で確定しています。

この確定した賃金総額を申告して、保険料を改めて計算することで、不足額がないか、今年度の保険料に充当できる保険料がないかを確認します。

この確定した保険料の金額を、「確定保険料」といいます。

事業主の方は、前年度の確定保険料の清算手続きと、今年度の概算保険料の申告・納付を併せた「年度更新の手続き」を、毎年度1回、7月10日までに行わなくてはなりません。

保険料計算の対象となる賃金は?

確定保険料

確定保険料の計算対象となる賃金は、昨年度分として(4月1日~翌年3月31日)に労働者に支払った賃金です。

実際の支払いが行われなかった場合でも、3月末までに支払いが確定していたときには、その賃金を含みます。

賃金総額は支給日ではなく、締め日で考えます。

(末締め翌日25日払いの会社の場合は、5月25日払い(4月分)~翌年4月25日払い(3月分)を賃金総額として計算します。)



労災保険には、業務執行権を有する役員等を除き、全ての労働者の方が無条件で加入します。

そのため、労災保険料の賃金総額は、全ての労働者に、労働の対償として支払った賃金が対象です。

また、雇用保険料の賃金総額は、被保険者にならない方(学生アルバイト等)に対して支払った賃金がある場合には、その賃金を除いて計算します。

さらに、労働保険料とともに、全ての労災適用事業所は、「一般拠出金」という、アスベスト健康被害者の救済に係る費用を負担します。

保険料率は、業種を問わず、一律で0.02%です。

一般拠出金は、労働保険料に比べて少額のため、概算で支払うという手続きがありません。

前年度の労災保険の賃金総額に乗じて計算しますので、確定保険料の申告に併せて申告・納付します。

参照:一般拠出金とは(厚生労働省)

概算保険料

前年度の賃金総額と大きな変動がない場合は、前年度の賃金総額と同額を見込み額として記載して、概算保険料を計算します。

一般的には、前年度と比較して、2倍以上2分の1以下の変動がなければ同額を記載します。

なお、申告時点で変動が明らかな場合は、その賃金総額を記載して差し支えありません。

賃金集計表と申告書の書き方

労働保険の年度更新の書類に同封されている「賃金集計表」を作成して、その数値を転記すると、申告書の記入がスムーズです。

賃金集計表では、労災保険と雇用保険の対象者に支払った賃金総額と、1月に使用する労働者の人数平均を計算します。

次に、計算した賃金総額を申告書に転記し、あらかじめ印字されている保険料率をかけて、保険料を計算します。
(保険料率は、○/1,000ですが、賃金総額も1,000円未満を切り捨てて記載するので、分子のみ乗じればOKです。)

労災保険と雇用保険の賃金総額が同額である場合は、「労働保険料」欄に賃金総額を記載して、保険料率を乗じれば、保険料額を算定することができます。

労災保険と雇用保険で賃金総額が異なる場合には、別々に保険料額を計算し、労働保険料欄に合計額を記入します。

なお、労災保険料率は、前年度と変更になっている業種があります。

この場合、賃金総額が同じでも、確定保険料と概算保険料の金額が同額にならない場合がありますので、注意しましょう。

また、一般拠出金の賃金総額は、労災保険の確定保険料の賃金総額と同額で計算します。


その後、計算した「確定保険料」と、印字されている「申告済概算保険料額」を比較して、差額を確認します。

申告済概算保険料額は、前年に見込額で事業主が申告・納付した概算保険料の金額ですので、不足がある場合は、今年度の概算保険料と一緒に、追加で納付が必要です。

左下の「期別納付額欄」に、概算保険料と不足額(充当額)を記載して、その合計額を納付書の労働保険料欄に記入します。

年度更新で納付する保険料の合計は、①前年度の確定保険料の不足額+②今年度の概算保険料+③一般拠出金となります。


また、確定保険料より、申告済みの概算保険料の方が多い場合、通常は今年度の概算保険料に充当する手続きをとります。

(希望があれば還付も可能ですが、還付請求書の作成が必要です。)

一般的には、第1期の概算保険料の次に一般拠出金に充当し、余りがある場合は、第2期、第3期の保険料に充当します。

保険料納付のあれこれ

保険料は基本的に一括で支払いますが、今年度の概算保険料が40万円以上の場合は、概算保険料を3期分に分けて納付することができます。

この場合は、申告書に延納の旨を記載する必要があります。(申告書の延納申請欄に「3」と記載します。)

また、保険料支払いを口座振替にすると、納付期限が2か月ほど延長されます。

参照:労働保険料等の口座振替納付(厚生労働省)


なお、年度更新の手続きを電子申請で行った場合には、保険料を電子納付することも可能です。

電子申請について

手続きの利便性やコスト削減の観点から、電子申請の利用が推奨されています。

初期設定に少し時間がかかりますが、記入ミスを防げたり、書類作成の手間が軽くなることは大きなメリットです。

必要に応じて活用を検討しましょう。



参照:労働保険は電子申請で(厚生労働省)

まとめ

労働保険の年度更新のポイント

・労働保険の年度更新とは、前年度の確定した労働保険料の申告・納付手続きと、今年度の未確定の保険料を、おおよそで見積もって申告・納付する手続きを併せたもの。保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位として計算する。

・毎年度、6月1日から7月10日までに手続きを行う。

・年度更新で納付する保険料の合計は、①前年度の確定保険料の不足額+②今年度の概算保険料+③一般拠出金となる。

年度更新は複雑な手続きのため、時間がかかる方も多いかと存じます。

お困りごとのある事業主の方・労務ご担当者の方は、是非お声がけください。

参照:労働保険年度更新に係るお知らせ(厚生労働省)