1か月の労働時間は何時間?割増賃金と月平均所定労働時間の上限について

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本日は、割増賃金と月平均所定労働時間の上限についてご案内いたします。

目次

1、所定労働時間とは?法定労働時間との違い
2、割増賃金(残業代)について
3、割増賃金の計算方法
4、所定労働時間が法定労働時間より短い場合の割増賃金は?
5、月平均所定労働時間の上限
6、まとめ

所定労働時間とは?法定労働時間との違い

所定労働時間とは、就業規則等で会社が定めた労働時間のことです。

労働基準法では、1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間と定められています。

この労働時間の上限のことを、「法定労働時間」といいます。

なお、常時10人未満の労働者を使用する、商業・映画演劇業・保健衛生業・接客娯楽業の場合は、法定労働時間は1日8時間、1週間44時間です。

所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で設定します。

法定労働時間を超えて就業させる場合は、労使協定を締結して、労基署に届け出なければなりません(労基法36条に定められているため、「36協定」といいます。)

割増賃金(残業代)について

使用者が労働者に、時間外労働(法定労働時間を超えた労働)・休日労働・深夜労働をさせた場合には、一定の割増率以上の率で計算した、割増賃金を支払わなければなりません。

時間外労働とは、法定労働時間を超えた労働のこと、休日労働とは、労働基準法の(法定)休日に労働させることをいいます。

なお、(法定)休日とは、毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日のことです。

休日は曜日を問わず、1日単位(午前0時~午後24時の範囲)で与える必要があります。

また、深夜労働とは、午後10時から翌日午前5時までの間に労働させることをいいます。

時間外労働・休日労働・深夜労働の割増率は、下記の表のとおりです。

割増率
時間外労働25%以上
(1か月60時間を超える労働については50%以上)
休日労働35%以上
深夜労働25%以上

時間外労働には上限が定められています。

原則として1か月45時間、1年360時間を超えないものとしなければなりません。
(1日の残業時間は2時間程度です。)

割増賃金の計算方法

割増賃金の計算式は、「1時間あたりの賃金額×時間外・休日・深夜労働を行わせた時間数×割増率」です。

月給制の場合は、各種手当を含めた月給を、1か月の平均労働時間数(月平均所定労働時間)で割って、1時間あたりの賃金額を計算します。

なお、労働と関係性の薄い下記の手当や賃金は、割増賃金の計算基礎から除外することができます。

①家族手当
※扶養家族の有無に関係なく、一律で支給されるものは除外できません。
②通勤手当
※通勤費用や距離に関係なく、一律で支給されるものは除外できません。
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
※住宅にかかる費用に応じて算定されるものに限ります。
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1か月を超えるごとに支払われる賃

参照:時間外労働の上限規制-働き方改革特設サイト-(厚生労働省)、割増賃金の基礎となる賃金とは?(厚生労働省)

割増賃金が重複する場合は?

割増賃金は、①時間外労働と深夜業休日労働と深夜業の場合に、重複して発生します。

①時間外労働&深夜業→25%+25%=合計50%以上の割増賃金
②休日労働&深夜業→35%+25%=合計60%以上の割増賃金

なお、法定休日には「法定労働時間」が存在しないため、時間外労働に対する割増賃金は発生しません。

そのため、休日労働と時間外労働は重複せず、休日労働に対する35%以上の割増賃金を支払うことになります。

所定労働時間が法定労働時間より短い場合の割増賃金は?


所定労働時間が7時間の事業所の場合、1時間残業をしても、法定時間内の残業ですので、25%以上の割増率で計算せず、1時間あたりの賃金額(1倍)を支給すれば足ります。

就業規則を作成する場合、「所定労働時間を超えた時間は通常の賃金、法定労働時間を超えた時間に対しては割増賃金を支払う。」と明確にしておくことをお勧めします。

月平均所定労働時間の上限

割増賃金は前述のとおり、「1時間あたりの賃金額×時間外・休日・深夜労働を行わせた時間数×割増率」によって計算します。

1時間あたりの賃金単価を求めるためには、1か月の平均労働時間数(月平均所定労働時間)を把握する必要があります。

月平均所定労働時間を求める理由は、1か月の日数(28日~31日)には幅があり、毎月、計算式が異なると、給与計算が煩雑になるためです。

月平均所定労働時間は、以下の計算式で求めることができます。

1年間の所定労働日数(1年間の歴日数-会社が定める1年間の休日の合計)×1日の所定労働時間÷12

なお、月平均所定労働時間の上限は、173.8時間(※)です。(変形労働の場合を除きます。)

上限を超えないように、月平均所定労働時間を設定しましょう。

※月平均所定労働時間の計算方法
①1年間=365日(閏年を除きます。)
②365日÷7日(1週間)=52.14週(1年間は52.14週です。)
③52.14週×40時間(法定労働時間)=2085.6時間
④2085.6時間÷12か月=173.8時間(月平均所定労働時間)
または、40時間÷7日×365日÷12か月で計算します。


まとめ

割増賃金と所定労働時間のまとめ

・所定労働時間とは、就業規則等で会社が定めた労働時間のこと。法定労働時間の範囲内で設定する。
・時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合は、一定の割増率以上の率で計算した割増賃金を支払う。
・法定時間内の残業は、1時間あたりの賃金額(1倍)を支給すればOK
・休日&深夜・時間外&深夜の場合は、割増賃金が重複して発生する。
・月平均所定労働時間の上限は173.8時間


本日のご案内は以上です。

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