賃金支払いの基本ルールは?休業手当・賞与の支給についても併せて解説
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本日は、賃金支払いの基本ルールと、休業手当・賞与の支給についてご案内いたします。
目次
1、賃金の定義は?
2、賃金支払いの基本ルール
3、休業手当とは
4、賞与について
5、まとめ
賃金の定義は?
労働基準法で定める賃金とは、使用者が、労働の対償として労働者に支払う全てのものをいいます。
賃金は、給与・手当・賞与等の名称を問いません。
支給要件が就業規則や労働契約で明確に規定されているものは、使用者に支払義務があり、労働者の権利として保障されているため、賃金に該当します。
なお、時間外・休日・深夜労働に対して支払われる割増賃金も賃金にあたります。
また、賃金に該当しないものとしては、以下のようなものがあります。
・事業主が任意的・恩恵的に支払うもの(結婚祝金、災害見舞金など)
ただし、就業規則や労働契約によって、あらかじめ支給条件が明確に定められているものは、賃金に該当します。
・発生した費用を実費で補填するもの(出張旅費・テレワークにかかる費用の清算など)
・労働者が使用者を通さずに得るもの(客から直接受け取るチップなど)
賃金支払いの基本ルール
賃金は、労働者が働けば支払い義務があり、働かなければ支払い義務はありません。
これを、「ノーワークノーペイの原則」といいます。
なお、労働や遅刻の有無にかかわらず賃金を支給する、と規定した場合はその定めが優先されるため、ノーワークノーペイの原則は、絶対的なものというわけではありません。
また、賃金には次の原則があります。
①通貨払いの原則
現金or労働者の同意を得て、口座振込で支払います。
②直接払いの原則
本人に直接支払うことで、中間搾取を防止します。
③全額払いの原則
賃金の全額を支払うことで、労働者の生活を保障します。
なお、給与所得の源泉徴収や社会保険料等の控除、労使協定等を根拠に、給与天引きで一定の費用を控除することは差支えありません。
また、使用者が労働者に対して金銭債権を持っている場合でも、原則として、賃金と金銭債権を相殺することはできません。
④毎月1回以上・一定期日払の原則 (定期的に賃金を支払うこと)
安定した賃金の支払いを確保することが目的です。
臨時に支払われる賃金(賞与等)は、この原則の対象外とされています。
さらに、賃金には最低賃金法の規制があります。
仮に、最低賃金額より低い賃金を労働者・使用者双方の合意の上で定めても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額まで賃金額が引き上げられます。
参照:賃金(厚生労働省 兵庫労働局)、最低賃金制度とは(厚生労働省)
休業手当とは
使用者の都合(帰責事由)で労働者を休業させた場合は、休業手当として、休業させた所定労働日について、平均賃金の60%以上の賃金を支払う必要があります。
使用者の帰責事由の範囲は広く、天災事変のような不可抗力を除く全ての場合が該当します。
そのため、業務量の減少や経営難による休業の場合でも、使用者は休業手当を支払う必要があります。
平均賃金は、休業日の前日から数えて3か月に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割って計算します。
(賃金締切日がある場合には、直前の賃金締切日から前3か月間で計算します。)
なお、3か月間以内に次のような期間が含まれている場合には、賃金総額が少なくなることを防ぐため、平均賃金の計算から控除して計算します。
- 労災による休業期間
- 産前産後休業期間
- 育児・介護休業期間
- 試用期間
- 使用者都合による休業
参照:休業手当の計算方法(厚生労働省 山形労働局)
賞与について
賞与は、平均賃金の計算や割増賃金の算定、毎月1回以上・一定期日払の原則から除外された賃金です。
賞与については、会社の裁量が広く認められています。
賞与の支給条件として、賞与の支給日に在籍しているという要件を設けることは、合理的なものであると解されています。
ただし、意図的に支給日を遅らせて、退職者の賞与を支払わないことは認められません。
なお、就業規則によって、
・会社の業績によって支給金額を決定する
・査定等を経て賞与支給額を決定する
上記のように定めている場合は、適正な査定等による減額であれば差支えありません。
参照:よくあるご質問(賃金・退職金・賞与関係)(厚生労働省 大阪労働局)
こちらもどうぞ:賞与の社会保険料についての記事はこちら
まとめ
賃金・休業手当・賞与の支給についてのまとめ
- 労基法で定める賃金とは、使用者が、労働の対償として労働者に支払う全てのもののこと。名称を問わない。
- 賃金は、最低賃金法の規制を受ける。また、①通貨で②労働者に直接③全額を④毎月1回以上・一定期日に支払う。
- 休業手当は、休業させた所定労働日について、平均賃金の60%以上の賃金を支払う必要がある。使用者の帰責事由の範囲は広い。
- 賞与については、会社の裁量が比較的広く認められる。
本日のご案内は以上です。
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