労働条件通知書に記載する内容は?書き方や交付のタイミングのまとめ
ご覧いただきありがとうございます。社労士オフィスそらです。
本日は、労働条件通知書の書き方や注意点についてご案内いたします。
労働条件通知書とは?雇用契約書との違い
労働条件通知書とは、使用者が労働者に交付する、基本的な労働条件を定めた書面のことです。
労働基準法に基づき、雇用形態にかかわらず、全ての労働者への交付が義務付けられています。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。(労基法第15条1項)
労働条件通知書は、使用者が労働者に労働条件を伝えるために作成・交付する文書です。
一方で雇用契約書は、雇用条件について、使用者と労働者が合意したことを証明するための文書です。
※雇用契約とは、労働者が使用者に対して労働に従事することを約束し、それに対して使用者が労働者に報酬を与えることを約束することによって効力が生じる契約のことです。(民法623条)
原則として、契約は書面がなくても口頭で成立します。しかし、契約書の締結によって、契約内容の確認・合意や信用性が確保されるため、法的な義務がなくとも契約書を作成することが一般的です。
なお、労働条件通知書と雇用契約書をまとめた、「労働条件通知書兼雇用契約書」の作成も認められています。
「労働条件通知書兼雇用契約書」には、労働条件通知書に明示が必要な事項を全て記載しなくてはなりません。また、労使双方の合意を証明するために、署名捺印欄を設けるようにしましょう。
労働条件通知書に記載する事項
労働条件通知書には、必ず記載が必要な「絶対的明示事項」と、定めがあれば記載が必要な「相対的明示事項」があります。なお、労働条件通知書の様式に定めはありません。
記載事項は次のとおりです。
必ず明示が必要な事項【絶対的明示事項】 ※①~⑥は書面による明示が必要 ※②・③の太字部分は令和6年4月からの追加箇所 | 定めがあれば記載が必要な事項【相対的明示事項】 ※口頭でもOK |
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①労働契約の期間 | ⑧退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法及び支払い時期 |
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準 (更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容) | ⑨臨時に支払われる賃金、賞与等及び最低賃金額に関する事項 |
③就業の場所・従事すべき業務(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。) | ⑩労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項 |
④始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出・残業等)の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項 | ⑪安全衛生に関する事項 |
⑤賃金の決定、計算・支払方法、賃金の締切り・支払いの時期 | ⑫職業訓練に関する事項 |
⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む。) | ⑬災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項 |
⑦昇給に関する事項 | ⑭表彰、制裁に関する事項 |
⑮休職に関する事項 |
パートタイム労働者を雇い入れた場合は、上記の事項に加えて、①昇給の有無②退職手当の有無③賞与の有無④相談窓口(相談担当者の氏名・役職等)を文書等で明示しなくてはなりません。
明示の方法は書面の交付が原則ですが、労働者の希望がある場合に限って、ファックスやメール、SNSメッセージによる明示も可能です。
この場合、労働者へデータの到達確認を行い、書面を出力して保存するように伝えます。(※メール・SNSで明示する場合には、印刷や保存がしやすいように、添付ファイルで送信しましょう。)
参照:労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~(厚生労働省)、モデル労働条件通知書(厚生労働省)
また、就業規則を作成している場合は、労働条件通知書に、各明示事項の該当部分、就業規則を確認できる場所や方法を記載することが望ましいでしょう。
こちらもどうぞ:就業規則に関する記事はこちら
労働条件通知書を交付するタイミング
使用者は、労働者と労働契約を結んだ時点で、労働条件通知書を交付しなければなりません。
新しく従業員を採用した場合は、内定時に内定通知書と同時に交付することが一般的です。就労開始後の交付は認められていませんので注意しましょう。
なお、有期労働契約の更新時にも、労働条件通知書の交付が必要です。
また、令和6年4月から、労働条件の明示事項が追加されています。明示のタイミングは次のとおりです。
明示のタイミング | 追加分の明示事項 |
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全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時 | ①就業場所・業務の変更の範囲 |
有期労働契約の締結時と更新時 | ②更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容 |
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時 | 無期転換申込機会、無期転換後の労働条件 |
①の「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の変更の範囲のことです。就業場所・業務に限定がない場合は、すべての就業場所・業務を含める必要があります。
②の「更新上限」については、最初の労働契約締結後に更新上限を新設・短縮する場合、その理由を労働者にあらかじめ説明しなくてはなりません。
参照:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます(厚生労働省)
まとめ
労働条件通知書のまとめ
- 労働条件通知書とは、使用者が労働者に交付する、基本的な労働条件を定めた書面のこと。全ての労働者に対する交付義務がある。
- 雇用契約書は労使双方が雇用条件について合意したことを証明する文書のこと。「労働条件通知書兼雇用契約書」の作成も可能。
- 労働条件通知書には必ず記載が必要な事項、定めがあれば記載が必要な事項がある。
- 労働契約の締結時、有期労働契約の更新時に労働条件通知書を交付する。
本日のご案内は以上です。
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