固定残業代とは?導入のメリット・デメリットと注意点のまとめ
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本日は、固定残業代についてご案内いたします。
固定残業代とは?
固定残業代とは、名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。
固定残業代制度を導入する場合は、募集要項等に以下の3点を明示しなければなりません。
① 固定残業代を除いた基本給の額
② 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③ 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
固定残業代の種類として、基本給とは別に定額の手当として支給する「手当型」と、基本給に割増賃金を含めて支払う「組込型」があります。
どちらの場合でも、時間外労働の対価として支払われていること、所定内賃金と割増賃金が明確に区分できることが求められます。なお、固定残業代の計算において、労基法第37条に定められた割増率を下回ることはできません。
※労基法第37条による割増率は、次のとおりです。これらは、通常の賃金に加算される割合を指します。【時間外労働】25%以上【深夜労働(22時~5時)】25%以上【休日労働】35%以上【月60時間超の時間外労働(法定労働時間を超えたもの)】50%以上
また、固定残業代制度を導入した場合でも、定められた時間を超過したときの割増賃金は別途支払う必要があります。
参照:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします(厚生労働省)
こちらもどうぞ:割増賃金についての記事はこちら
固定残業代のメリット・デメリット
メリット
事業主
- 人件費の変動を抑制できる。
- 労働生産性が向上する場合がある。
- 残業時間が定められた時間数以下であれば、割増賃金の計算が不要になる。
従業員
- 定額で割増賃金が支払われることで、収入の見通しが立てやすく生活が安定する。
- 残業時間を減らして、業務の効率化を進めることが可能になる。
デメリット
事業主
- 労働者にマイナスイメージを持たれる場合がある。
- 労働者の長時間労働の原因になる場合がある。
従業員
- 固定残業代の運用が適切でない場合、定められた残業時間を超過した際の割増賃金が支払われない可能性がある。
- 長時間労働が常態化する可能性がある。
導入にあたって
残業時間の実態を把握した上で、どの程度の残業時間を固定残業代として支払うかを決定します。
※時間外労働の限度時間である45時間を超えるような残業時間は無効となる可能性があります。
その後、固定残業代について就業規則(賃金規程)に定めた上で、従業員に対して時間数・金額を労働契約書等の書面で明示します。
給与の総額を変更せずに固定残業代を導入する場合は、従業員に対して説明を尽くした上で、合意を得なければなりません。
固定残業代を導入した場合でも、従業員の労働時間は適切に把握する必要があります。超過分については必ず割増賃金を支払いましょう。
おわりに
固定残業制度は適切に運用する必要があり、導入によってかえって管理が煩雑になることがあります。
まずは労基法第37条に基づいた割増賃金を支払うことを原則として、その後、固定残業代制度の導入が本当に必要かを検討することが望ましいと考えます。
本日のご案内は以上です。
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