専門業務型裁量労働制導入のポイント解説:従業員同意と法令遵守の重要事項

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ご覧いただきありがとうございます。社労士オフィスそらです。

本日は、裁量労働制の一つである、専門業務型裁量労働制についてご案内いたします。

裁量労働制とは

「裁量労働制」とは、業務を進める方法や時間の配分などに関して、会社が具体的な指示をしないことを一定の取り決めで定めた場合に、取り決めで決めた時間分だけ働いたとみなす制度のことです。

 この制度を採用するには、労使協定の締結・届出や労使委員会の設置・決議・届出が必要です。

労使委員会とは、給料や労働時間など、働く条件について会社と従業員の代表が話し合う場のことです。委員会は、会社側の代表と従業員側の代表で構成され、話し合った内容をもとに、会社に意見を伝えます。人数の規定は特にありませんが、従業員側の委員は半数以上を占める必要があります。なお、労使それぞれ1名だけでは、労使委員会として認められません。

裁量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類がありあます。

違いは次のとおりです。

項目専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制
対象職務プログラマー、デザイナー、研究開発者など、専門知識やスキルを使う仕事事業戦略の策定等、会社の重要な方針や決定に関わる仕事
働き方の特徴従業員本人が、業務の進め方や時間配分を決定する従業員本人が、業務の進め方や時間配分を決定する
導入の要件労使協定・従業員の同意労使委員会の決議
評価の基準仕事の成果や専門性で評価企画や立案の結果・会社の成果で評価

今回は「専門業務型裁量労働制」について確認していきます。

出典:専門業務型裁量労働制について企画業務型裁量労働制について(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

専門業務型裁量労働制について

専門業務型裁量労働制は、会社が業務の遂行方法や時間の使い方を細かく指示することが難しい場合に適用される制度です。
法令で定められた業務の中から対象となる業務を労使協定で指定し、従業員を実際にその業務に就かせた場合、協定で定めた時間を「みなし労働時間」として扱うことができます。

みなし労働時間の設定について

1日単位で定める

労働時間としてみなす時間は、1日単位で定めます。1週間単位や1か月単位の時間を協定することはできません。なお、休日労働や深夜労働については、実労働時間に応じて割増賃金を支払います。

適切な水準の設定

対象業務の内容や、適用される賃金・評価制度を踏まえ、適切なみなし労働時間を設定します。裁量労働制にふさわしい待遇を確保していることが重要です。

実労働時間との関係

みなし労働時間は必ずしも実労働時間と一致する必要はありませんが、特別手当の支給や基本給の引上げなどで相応の処遇を確保する必要があります。

業務量と処遇のバランス

所定労働時間をみなし労働時間として設定しても、業務量が明らかに多すぎるのに相応の処遇を与えないことは不適当です。

専門業務型裁量労働制の導入手順

1.制度の対象業務の設定と労使協定の締結・届出

労使協定では、1日の労働時間としてみなす時間や、会社が業務の遂行にあたって具体的な指示をしないこと、健康・福祉確保措置の内容、従業員の苦情への取り扱い等を規定します。

労使協定に定める事項は次のとおりです。

労使協定に定める事項
制度の対象とする業務(省令・告示により定められた20業務)
労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
対象業務の遂行方法や時間配分について、会社が従業員に具体的な指示をしないこと
健康・福祉を確保するための措置
※深夜業の回数制限や労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用の解除等
苦情処理のための措置
※苦情申出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順・方法等、具体的内容を明らかにすることが望ましい
制度の適用にあたって、従業員本人の同意を得ること
制度の適用に従業員が同意しなかった場合に、不利益な取扱いをしないこと
従業員が本人同意を撤回する場合の手続き
労使協定の有効期間
記録の保存(3年間)

専門型業務裁量労働制の労使協定は、労基署に届け出ることで初めて効力が発生します。適切に締結し、届出を行いましょう。

2. 従業員本人の同意取得

専門業務型裁量労働制を導入する際は、従業員一人ひとりの同意を得ることが必要です。

会社は、制度の概要や賃金・評価の仕組み、同意しなかった場合の配置や処遇について、説明書などの書面で丁寧に案内し、従業員本人から同意書を取得します。

また、従業員が導入に同意しなかった場合や、後から制度の撤回を申し出た場合でも、不利益な取扱いは禁止されています。こうした従業員は、通常の労働時間制(所定労働時間+時間外労働の管理)で勤務することになります。

出典:専門業務型裁量労働制の解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

専門業務型裁量労働制の適切な運用のために

専門業務型裁量労働制の運用にあたっては、対象となる業務に合わせて適切な水準のみなし労働時間を設定し、ふさわしい処遇を整えましょう。

運用の透明性と従業員への丁寧な説明が大切です。法令や厚生労働省の指針に沿った運用を心がけましょう。