社会保険料とは?金額の決定方法や等級、保険料率について解説
ご覧いただきありがとうございます。社労士オフィスそらです。
本日は、社会保険料の決定方法や等級、保険料率についてご説明します。
この記事でわかること
1 社会保険料とは?給与から控除される社会保険料について
2 各保険料の特徴は?決定方法や等級、保険料率について
3 保険料率が変更になる月は何月?
社会保険料とは?給与から控除される社会保険料について
社会保険料とは、労災保険・雇用保険・厚生年金・健康保険・介護保険にかかる保険料のことです。
労災保険は、事業主が保険料の全額を負担します。
そのため、給与からは、雇用保険料・厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料の4つの保険料が控除されます。
事業主が従業員の負担分を給与から天引きの上、事業主負担分の保険料とまとめて支払いを行っています。
各保険料の特徴は?決定方法や等級、保険料率について
各保険料の決定方法について確認します。
雇用保険料
雇用保険料は、下記の計算式によって毎月計算されます。
「賃金総額×従業員負担の雇用保険料率」
賃金総額は、「労働の対償として事業主が労働者に支払うすべての賃金」のことを指します。
実費精算の意味合いが強い出張旅費や弔慰金等は、賃金総額に含みません。
なお、令和6年度の雇用保険料率は、令和5年度と同様です。
参照:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」
雇用保険料率は、事業の種類によって、3つに分かれています。(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業・建設の事業)
雇用保険二事業(※)に関する保険料は事業主のみ負担しているため、事業主の方が従業員より保険料の負担割合が高くなります。
※雇用保険二事業とは
失業の予防や雇用機会の拡大、在職者や離職者の能力開発を目的とした雇用事業のこと。雇用安定事業と能力開発事業の2つがある。
参照:雇用保険制度(厚生労働省)
なお、保険料率の変更日以降に支払いが確定した賃金から、変更した保険料率が適用されます。
下記を例に計算します。
基本給 | 250,000円 |
家族手当 | 5,000円 |
通勤手当 | 10,000円 |
残業手当 | 20,000円 |
出張旅費 | 10,000円 |
合計額 | 295,000円 |
基本給以外の家族手当、通勤手当、残業手当は、労働の対償(対価)なので、賃金総額の対象です。
前述のとおり、実費精算の意味合いが強い出張旅費は賃金総額から除外します。
以上を踏まえ、他の社会保険料を控除する前の賃金総額から以下のとおり計算します。
雇用保険料(従業員負担分):285,000円(基本給+出張旅費以外の各種手当の総額)×0.6%(一般の事業の雇用保険料率)=1,710円
雇用保険料の特徴は、賃金総額によって毎月変動することです。給与の総額が多い月は、雇用保険料も高額になります。
厚生年金保険料
厚生年金保険料の計算式は、「標準報酬月額×保険料率」です。
標準報酬月額とは、ご自身の給与の月額を、保険料額表の「報酬月額(円以上~円未満)」という区分に当てはめたあと、さらに、保険額表の「標準報酬」欄の32等級のいずれかに区分した、報酬の概算額のことです。
参照:全国健康保険協会 福岡支部「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
(上記表の左欄のカッコ書きで記載されている等級です。)
給与の総額には、各種手当を含みます。臨時で支払われる賃金は含みません。
なお、標準報酬月額は、社会保険料の決定だけではなく、将来の年金額の計算にも使用されます。
保険料率は18.3%で固定されています。保険料は事業主と従業員で半分ずつ負担しますので、従業員負担の保険料率は9.15%となります。
標準報酬月額は、給与支給の都度、計算を行うわけではありません。
一定の方法で決定された標準報酬月額をもとに、毎月、同額の保険料が控除されています。
通常は、7月1日に就業している事業所で、4月~6月に支払われた給与総額の平均額から報酬月額を算出し、毎年1度、標準報酬月額を決定する方法(定時決定)がとられます。
また、入社時は、被保険者資格を取得したときに受け取る給与の予定額から報酬月額を計算し、標準報酬を決定します(資格取得時決定)。
報酬月額が285,000円の方を例に、前述の、健保協会 福岡支部の保険料額表を使用して、保険料を計算します。
①報酬月額が290,000円~310,000円の間であるため、標準報酬月額は300,000円(厚生年金の等級は、19等級)
②標準報酬月額300,000円×保険料率18.3%÷2(事業主と半分ずつ負担)=27,450円
保険料額表の従業員負担分の保険料と一致します。
ところで、標準報酬月額は毎月計算しないため、実際に受け取っている報酬と、支払っている社会保険料の負担割合が釣り合わなくなることがあります。
これでは賃金の実態を反映できているとはいえず、不都合が生じます。
そのため、連続した3か月間の給与平均が、従前の標準報酬月額と大きく変動したとき(随時改定※)や、育児休業終了時の改定など、一定の要件を満たすことで、定時決定の前に改定されることがあります。
※随時改定(月額変更)
基本給などの固定的賃金の変動が要件のため、残業手当が増えたことで、等級に変動が生じたときなどは対象外です。
参照:従業員の報酬月額の届出を行うときの手続き(算定基礎届・月額変更届等)(日本年金機構)
健康保険料
健康保険料の計算式も、「標準報酬月額×保険料率」です。
保険料率は、都道府県ごとにある健保協会や組合によって異なります。
標準報酬月額は、厚生年金保険料と同じく保険料額表を使用して計算します。なお、厚生年金と健康保険は加入基準が同一のため、基本的に一緒に加入します。
標準報酬の決定方法も厚生年金保険と同様ですが、健康保険の等級の区分は50等級あります。
保険料は事業主と従業員で、基本的に折半です。(組合健保は、事業主の負担割合が高いことがあります。)
介護保険料
介護保険料は、40歳から64歳まで支払います。
健保協会の介護保険料率は、全国一律で1.6%(令和6年度)です。事業主と折半して負担します。
なお、組合健保は料率が異なる場合があります。
保険料率が変更になる月は何月?
雇用保険料
料率に変更がある場合は、通常、毎年4月に改定されます。(4月以外のときも稀にあります。)
保険料の変更日以降に支払いが確定した賃金=給与の締日が改定日以降に到来したときに、新しい料率を適用します。
厚生年金保険料
平成29年9月に引き上げが終了しました。現在、18.3%で固定されています。
参照:保険料額表(平成29年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
健康保険料・介護保険料
毎年、3月分の保険料から改定されます。
社会保険料は、原則、前月分を給与より控除します。そのため、4月に受け取る給与から、新しい料率が適用された保険料となります。
参照:令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
まとめ
社会保険料のポイント
・社会保険料とは、労災保険、雇用保険、厚生年金、健康保険、介護保険にかかる保険料のこと。労災保険料以外の保険料が、毎月給与から控除される。
・雇用保険料は毎月計算される。
・厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料は、標準報酬月額をもとに、毎月決まった金額が控除される。給与の金額に大きな変動があるときは、途中で保険料が変更になる場合がある。
・保険料率は、雇用保険料は毎年4月(※イレギュラーあり)、健康保険料・介護保険料は3月分から変更になる。厚生年金の保険料率は、現在固定されている。
本日のご説明は以上です。
ご不明な点がある事業主の方、労務ご担当者の方はお気軽にお尋ねください。